『えーもっと飲もうよ!ほらほら~。飲まないと強くならないよー!』
『ほら飲みなよ!え、飲まないの?コミュニケーションの基本だよ?』
皆さんの職場にこんなことを言う人はいませんか?
または、あなた自身が言ったことはありませんか?
20世紀から21世紀初頭の日本では、このようなコミュニケーションの手法のことを『飲みにケーション』と呼ぶ文化がありました。
でも実はこれ、現代ではマナー違反なのです。
(2018年の日本では美徳かもしれませんが、いずれ古典になるでしょう。いとをかし。)
部下が体調不良になったり死んだりすると上司や会社が責任を問われるので失礼
お酒を飲めないタイプの人が無理にお酒を飲むとどうなるか。
吐いたり気を失ったり、最悪の場合急性アルコール中毒などで死に至ることもあります。
職場の飲み会には、上司や先輩など、お酒の勧めを断りづらい人がたくさんいることになります。
『俺の注いだ酒が飲めないのか?』
などと言われてしまえば、サラリーマンなら従わざるを得ないこともあるでしょう。
いわゆるアルハラ(アルコール・ハラスメント)と呼ばれるものです。
そして、死んでしまったら?救急車で運ばれてしまったら?
または、強要されたことを裁判所に訴えたら?
弁護士ドットコムニュースによれば
・職場の問題であれば会社にも使用者としての責任が生じる(民法715条)こともあります。
・飲酒できない部下に飲酒を強要したことが原因で訴訟になり、不法行為性が認定された裁判例(平成25年2月27日東京高等裁判所判決【平成24年(ネ)第2402号】)もあります。
(平山 諒 弁護士:「場が白けるから飲め」飲酒強要で体調不良に…「アルハラ」は犯罪?,弁護士ドットコムニュース,2017,2018/8/17閲覧 より引用)
とのことです。
つまり、飲酒を強要し体調不良に陥らせたり訴訟に発展した場合、勧めた人だけではなく使用者側である会社や上司も責任を問われる可能性があります。
同席していながら飲酒の強要を止めないのであれば共犯みたいなものですし、そのような空気の職場を作ったことに責任があります。
したがって、飲めない人に飲ませることは、上司に対して大変失礼に当たるのです。マナー違反ですね。
『飲めば強くなる』は嘘
『飲めば強くなるよ!』
などという人はいませんか?
実はあれ、嘘なのです。
科学に関する見識が無い人間であるということを自慢げに公開してしまうその姿に、涙を禁じえません。
簡単に科学的な話をすると、お酒の強さは血液型のように遺伝的に分かれることが知られています。
KIRINのWEBサイトなどで分かりやすく解説してくれていますが、大きく分類すると
・飲めるタイプ(依存しやすい)
・飲めなくはないタイプ(健康被害に遭いやすい、強くなろうと無理をしてはいけない)
・飲めないタイプ(無理)
に分かれます。
飲めなくはないタイプの人は、飲める量が増えたとしても健康を害しやすいですし、飲めない人は永遠に飲めません。
到底『強くなった』とは言い難いですよね。
正しいマナー:ソフトドリンクとお酒の両方を手にもって声をかける
とはいえ、せっかくの宴会の席です。
出席してしまったのなら皆で楽しく過ごしたいですよね。
そこで、飲み物を勧めるときには、ソフトドリンクとお酒の両方を手に持って選んでもらうというのが正しいマナーです。
先輩『グラス空いてるねー。飲むかい?(ウーロン茶とビールを両手に構える)』
後輩『あ、では、ウーロン茶をお願いします!』
先輩『ほい。飲め飲めー!(ウーロン茶を注ぐ)』
後輩『ありがとうございます!』
皆で楽しく、飲みたいものを飲みましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
社会人として、マナーを守ることは大変重要です。
『自分の嫌なことは相手にもしない』ではなく『相手が嫌がることはしない』をモットーに行動するのが大人というものです。